2015年1月14日水曜日

当地域での「おくすり手帳」について

正月気分も終わり、いよいよ本格的な冬の時期に入ってきました。

先日、とあるご家族さんからお知らせをいただきましたので、紹介させていただきます。
症 例:83歳、女性(Tさん)
疾 患:高血圧、めまい、慢性胃炎
家 族:7年前に義母を、2年前に夫を自宅で看取り、その後は一人暮らし。
    息子が県内に暮らしており、週末には帰って来て買い物などに連れてくれる。
    息子に「一緒に暮らそうか?」と言われているが、このままの生活がいいと言っている。

そんなTさんですが、昨年秋頃から少し調子が悪そうでした。
昨年11月にめまい発作があり、私ところに電話がありました。休日で息子さんもおられたので診療所に連れて来てもらい診察をしました。
めまい発作のようで、むかつき止めの点滴と薬を処方し、帰宅してもらいました。
その後、めまいはなかったものの、しんどくなったり、もの忘れを自覚したりといろいろと不安に思っておられる様子でした。
その後、診察に何度かきていただきましたが、パーキンソン症状を含め他の所見は認めず、長谷川式検査でも25/30と、年齢相応のもの忘れを認める程度でした。念のため病院でのMRI検査や採血などを行いましたが、異常は認めません。
私の診断では、「不安神経症」と「うつ状態」かと思っておりました。

その後、薬を調整したりして調子よくなっておられるのですが、ご近所さんから「Tさんのもの忘れがひどい」と私のところに連絡がありました。
どうやらご近所さんのところに行事の確認などに何度も訪ねて行かれていたそうで・・・ご近所ではTさんが「ボケてしまった」と話題になっていたようです。
Tさんお話の続きです。

何人かのご近所さん(うちの外来に通っておられる患者さんなのですが)には、「息子さんと話しているから大丈夫ですよ。また、Tさんのことで気になることがあったら私に連絡くださいね」とお話をしておきました。実際に、最近ではご近所さんに迷惑をかけるようなことは少なくなってきていました。
また、あとからわかった話なのですが、ご近所さん以外にも親戚の方などに電話をかけておられたそうです。親戚の方も心配になり、正月にTさんのところに行かれました。この親戚の方は、医療関係者の方で、親戚から「お前が行ってきてみてきてくれ」と急かされたそうです。

そして、Tさんのお宅で「おくすり手帳」を見られたそうです。
うちのおくすり手帳には、薬のことだけではなく、カルテをそのままプリントアウトしたものや検査結果のデータ、どのようなことを指導したかなど書いてあります。
それを読めば、医療関係者ではなくてもTさんが認知症ではないことや、Tさん自身がこのまま家に居たいとおっしゃっていることもわかります。
もちろん、だんだんと良くなっていることもご本人さん自身の声として書いてあります。

そんなご家族から先日メールをいただきました。
了解をいただきましたので一部伏せて転送させていただきます。

***********(以下、引用)*****************

突然のメール、失礼いたします。
お世話になっております○○(Tさん)の姪でございます。

昨日、叔母を訪ねた際、お薬手帳を拝見しました。
カルテのコピーと処方されたお薬が一目瞭然で、
客観的な叔母の状態がよくわかりました。

昨秋から叔母は不定愁訴があり、独居、かつ自分は子でないため
ただやきもきと心配をすることしかできないのがもどかしくあったのですが、
いろいろとケアをして頂いていることがわかり安心いたしました。

実は私、(とある施設の医療関係の職種)をしております。
自分の仕事に対する意識についても、
今一度見つめなおす機会を与えて頂けたような気がしました。

祖母も叔父も先生に看送って頂き感謝しております。
叔母のことにつきましても今後ともどうぞよろしく御願い申し上げます。
(研修医の方々もありがとうございます。)

***********(以上、引用おわり)*****************

おくすり手帳を見ていただいたのも嬉しかったのですが、おくすり手帳を通じて支える我々とご家族が繋がったのがとても嬉しく感じました。

Tさん、落ち着いて冬を越すことができることを願っています。


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当院の在宅医療について

   ここ19年間の実績をまとめました。      死亡診断書枚数   在宅患者さん人数   訪問診療・往診のべ回数 2005年    12           66          492 2006年    17           70          553 2007年...