10年前にいただいた手紙
往診に伺っている老夫婦のお宅へ昨日訪問診療に伺いました。5年前の秋に旦那さんが脳梗塞のため、右不全麻痺となられましたがリハビリを経てその年の年末には自宅に帰ってこられました。
以降、旦那さんは自宅で訪問リハビリや、通所サービスを受けられながらお二人で生活をされていますが、奥さん自身もこの頃はだんだん弱ってきたともお話しされる毎日です。
つい先日は、奥さんが旦那さんの薬を間違って飲まれたことを報告されたり、今日の訪問診療では、ご自身がトイレで失敗して下着を汚してしまうなどといったことをお話ししておられました。
今日も診察のあと「ご飯が食べられなくなったらどうする?」と尋ねたら、「先生、毎回聴いてくれるけど私の変わることはないぞ。あの手紙を書いてから、10年経つけど書き直さんとあかんか?」としっかりと答えられました。
確かに、旦那さんが具合が悪くなる前に頂いた手紙はもう10年が経とうとしています。
皆さんに私がいつも同じことを尋ねるもんですから「いつからが人生の最終章かわからない」と言われる方もおられますが、確かにわかりません。
でも、普段から自分自身のことですから考えておくこと、話せるうちに話しておくことが大切ですね。
帰り際、奥さんは「天気が良くなったら、畑に行きますわ」と笑顔で語っていただきました。
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先生 此の度はお世話になりありがとうございます。
私は今日迄かなりの幸せ者でしたが もう七十歳以上です
ので重態の時 延命治療(生命維持装置)は受けたくありません
身体中管だらけで息も器械でさせてもらっているような事は断じて
しないでください。
自分にも苦しい時間 私の大事な家族や姉妹にも親類の皆さんにも
心配と迷惑をかけたくありませんので 私には痛み止めと苦しみ止めの
注射を それだけをよろしくお願いします。
平成十七年二月より 命終る日迄
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赤線は本人による
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