2020年12月26日土曜日

年末のご挨拶


お店で注文しようとしたメニューが「SOLD OUT(売り切れ)です」と言われたら、残念だけどまぁ仕方ないですよね。でも、それが病院だったら・・・・

皆さんは「医療崩壊」と聞いて、どのようなことを想像されるでしょうか?病院の経営破綻、あるいは医師や看護師が過労で倒れている姿でしょうか。そんな医療者が悪戦苦闘する状況とは違うもう一つの姿が目の前に迫りつつあります。

感染症に限らず多くの病気は予告なしに現れます。急に具合が悪くなった時には、救急車を呼べば病院に運ばれ適切な治療をうけられる、健康保険に加入していれば一定の負担で最適な医療サービスをうけられる、それが日本における当たり前の医療の姿でした。医療現場で「SOLD OUT」、「ラストオーダー」なんて言われることは考えられませんでした。

しかし、新型コロナの流行で状況が一変しました。病院のベッドが重症患者で一杯になれば、病院に入院できない、あるいは入院しても最適な治療を受けられないことも考えなくてはならなくなりました。入院できる病院やベッドを増やせばいいと思われるかもしれませんが、いくら建物を大きくしても、医療スタッフをすぐに増やすことはできません。新型コロナに限らず、がん、心筋梗塞、脳卒中、骨折や肺炎など、皆さんが住んでいる地域の病院で治療できる患者さんの数には限りがあり、ある一定数を超えてしまうと最善の医療が提供できなくなる、それが「医療崩壊」なのです。

我々医療者は、必要な人に最善の医療を提供し人々の健康を守りたいのです。地域の限りある医療資源を枯渇させないために、新型コロナの患者さんを急激に増やさない努力を共にしていただきたいのです。新型コロナの流行も大きな波でなければ、日本のどの地域でも乗り越えることができると思っています。

繰り返しますが、医療崩壊とは病院が無くなってしまうのではなく、具合の悪い患者さんが病院にたどり着いても「受け入れられません」「治療できません」と断わらなければならない、今までの日本の医療システムでは考えられなかった悲痛な医療現場の光景なのです。

そのような光景を目にすることがないよう、この冬そしてこれからも皆さんと我々医療者が穏やかな時間を過ごせることを切に願っています。

 

202012

東近江市永源寺診療所   花戸 貴司

0 件のコメント:

コメントを投稿

当院の在宅医療について

   ここ19年間の実績をまとめました。      死亡診断書枚数   在宅患者さん人数   訪問診療・往診のべ回数 2005年    12           66          492 2006年    17           70          553 2007年...