2020年4月1日水曜日

利己的遺伝子という考え方

中国武漢で発生したCOVID-19(以下、「新型コロナ」と書きます)は、中国から全世界へと広まり、世界各国は国民の社会活動をとめるという手段でウイルスの広まりを抑えようと必死になっています。
しかし、現在のところ有効な治療法は開発されておらず、ワクチンもしばらく先になりそうです。
今まで人類は、様々な病原体による感染症の脅威と対面しました。天然痘など一部は押さえ込みに成功しましたが、ほとんどの感染症とは文化や生活スタイルを変えながら共存を続けています。今、世界中が立ち向かっている新型コロナとの戦いは、この先どうなるのでしょうか。

リチャード・ドーキンスが著書「利己的な遺伝子」で、すべての生物は遺伝子の乗り物に過ぎないという説を唱えました。

それまでのダーウィン説と対峙するもので、
ダーウィンは、個体が遺伝子よりも優先する。
 → 個体は自己に似た個体を残すことを目的とし、そのために遺伝子を利用する。
その一方で、ドーキンスは遺伝子が個体よりも優先する。
 → 遺伝子は自己に似た遺伝子を増やすことを目的とし、そのために個体を利用する。

というものです。つまりドーキンスの説によれば、生命体においては遺伝子が主体であり、全ての生物は遺伝子の乗り物でしかないという説です。

今回のコロナウイルスは、なんらかの野生動物が宿主でしたが、遺伝子がさらに広がるために人間を宿主に選びました。ウイルスが感染した全ての人間の命を奪ってしまっては遺伝子は自己を広めることはできません。
他の動物に比べ移動能力が格段に高い人間を選び、発症するまでに移動可能な潜伏期を保ち、多くの人間に感染しつつも軽症で済ませている(が、高齢者は重症になりやすい)。
ウイルス側から見るとグローバル化が進んだ人間社会こそが、自己増殖にとっては都合の良い宿主だったようです。
今回の新型コロナの流行は、グローバル化が進んだ人間の生活スタイルこそが根源だったと考えるのが自然なようです。
新型コロナウイルスは、せっかく選んだ宿主に感染する手を緩めることはないと思います。世界中で流行している感染症を、日本だけ感染が広がらないように押さえ込むことはおそらく不可能であり、人間にとっての現実は厳しいと思います。

社会活動を保ちながら、ウイルスといかに共存するか。
人間社会にとって新しい文化、新しい生活スタイルに変化するタイミングなのかもしれません。











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   ここ19年間の実績をまとめました。      死亡診断書枚数   在宅患者さん人数   訪問診療・往診のべ回数 2005年    12           66          492 2006年    17           70          553 2007年...