2014年1月27日月曜日

今日の毎日新聞

國森さんの写真絵本が掲載されています。
記事の内容は、秋山さんと市原さんのコメントが中心です。


2014年1月19日日曜日

駐車場の除雪を行いました。

永源寺地域は昨夜から降り積もった雪で、20cmほどの積雪です。
通常であれば外来開始までに作業を行っているのですが、今日は日曜日でしたので、太陽が昇ってからの除雪作業を行いました。




明日の朝は道路が凍結するおそれもありますので、受診される方は気をつけてお越し下さい。

2014年1月17日金曜日

幻の名医よりも、近くのかかりつけ医



 診療所に赴任した頃、自分はこんな医師になれればいいな、とおぼろげに思っていた。
診療所には医師は一人しかおらず、責任は重い。医師に課せられる技術はもとより、知識、そして知恵も大切。どんな病気であっても患者さんを断らず、なんでも診る。患者さんの話を丁寧に聴き、あらゆる検査を駆使し診断を下す。診療の最後には、病気や治療のことをわかりやすく説明する。自分では手におえない病気であれば、専門の病院に紹介し、病院の先生から「診療所○○先生からの紹介ですか、○○先生、とてもいい先生ですね。」と信頼も厚い・・・そんな「地域医療」への夢をもちながら診療所で仕事をしはじめた。
病院にいるときは「いかに難しい病気を診断し、治療するか」それが第一と考えていた。もちろん、それも大切なことなのだが、診療所に赴任してからは医療だけでは解決できないことがたくさんあることを知った。

外来での診療で最も大切なことは「問診」である。自分は、外来で患者さんから一生懸命に話を聴こうとしていたのだが、患者さん達は看護師さんや受付の事務職員さん、薬局さんに、私に言わないようなことを話していることに気づいた。もちろん世間話や姑さんの愚痴をこぼすこともあったが、なかには、「先生には内緒にしといて」と看護師さんに本音を吐露されることも。自分は聴く耳を持っているつもりなのだが、話してもらえない、なぜこっちを向いてくれないのか、悩んだ。そんなあるとき、一人の看護師さんから言われた。
「先生、誰にでも先生に言いにくいことはありますよ、私達がかわりに聴いておきますから」
全てのことを医師が解決しようとしなくてもいいんだ、自分の目や耳のかわり、そして手足になって動いてくれるスタッフがいる。そんなふうに考えられるようになったとたんに楽になった。医師だけが病気を治しているのではないことにようやく気付きはじめた時でもあった。

そして今、私が外来で患者さんと話をするときは、病気の問診というよりも普段のおしゃべりに近い。
「今の季節、畑でなにを作ってるんですか? 重いものを持って腰や膝は痛くないですか?」
「聞きましたよ!グランドゴルフ大会で優勝したんですって、すごいですね!」
「お孫さん、今度は小学生ですよね、大きくなりましたね。」
そんな具合に自分の患者さんのことだったら、病気のことはもちろん、どこに住んでいて、誰と一緒に暮らしているか、そして息子さんご夫婦、孫さんの顔や名前まで思い浮かべることができる。人によっては、家と離れたところであっても、どこに畑があるのかも知っている。言い換えると、病気のこと以外に、患者さんの生活や地域のことに関心を持てるようになった。それが病気を治療することはできないかもしれないが、患者さんの心を癒し元気を増やすことができることに気づいた。やはり、病院に勤務しているときは病気しか診ていなかったのだとつくづく感じる。

そして午後は往診、診療所に来ることができない患者さんたちのところへ赴く。地域の人達も診療所の往診車を知っていて、私が車を運転していると手を振ってくれたり、声をかけていただく。
今日は天気もいいせいか、途中の道路でおしゃべり中のおばさま達と遭遇した。



「先生、往診か?」
「ご苦労さんやな。私の家はそこやから、なんかあったら往診頼むわ」
「私は、そっち」
「ワシの家はここや」
「あはははは・・・」

いやいや、心配しなくても皆さんの家はちゃんと知ってますよ。

地域の人達は、高齢になって診療所に通えなくなっても施設に入るのではなく、家で過ごすことを当然のことと考えておられる方がほとんどである。私は外来で患者さんと話したことをカルテに書き留めているが、病気以外のこと、とくに自分の生きがいや大切にしていること、そして年をとってご飯が食べられなくなったときに病院に入院したいのか、それとも最期まで家に居たいと思っておられるのか、診察室でお話をした内容をちゃんと一人一人のカルテに書き留めている。たとえ、その時にしゃべれなくなっても私から家族に本人の思いを伝えるためだ。

私は難しい病気を治療したり、神の手と言われるような手術をしたりすることはできない。しかし、今の医療では治らない病気であっても、皆さんが家で生活したいと希望されれば寄り添うことはできる。奥さんや家族が介護に困っていたら、相談にのり一緒に考えることができる。老衰でご飯を食べられなくなっても、往診して傍につくことぐらいはできる。
私がこの地域で仕事をするうちに、地域の人達が望んでいるのは、難しい病気を治療する名医よりも、最期まで寄り添ってくれる医師ではないか、そう思えるようになった。たとえ病気が治らなくても、最期まで自分らしく、そして住み慣れた地域で過ごしたい、そう求められているようだ。
だから、私は一人一人の患者さんだけでなく、永源寺という地域全体を診たい。たとえ大きな病院がなくても、皆さんの一軒一軒のお宅が病室であり、道路が廊下、携帯電話がナースコールであればいい。そして、それを支えるのは、たった一人の医師ではなく、看護師さん、薬剤師さん、介護のヘルパーさんやケアマネージャーさん、市役所の方やその他たくさんのスタッフと、永源寺に住む地域の人々。私に求められているのは、神の手ではなく、地域の皆さんと一緒に考え、共に汗を流し、同じ方向を向いていること。そのような地域の皆でお互いを支えあう「地域包括ケア」というものができれば、年老いても安心して生活できる地域ができる、そのように信じている。

2014年1月7日火曜日

毎日新聞さんの社説

毎日新聞さんの社説にこの地域の医療・福祉連携ネットワーク「三方よし研究会」のことが紹介されていました。

東近江以外の宮崎や夕張の活動もとても参考になります。
これから、全国の「まちづくり」におおいに期待します。


*****************(以下、引用)************************
★毎日新聞 2014年01月06日
社説:これからの医療 患者革命で変えよう
http://mainichi.jp/opinion/news/20140106k0000m070085000c.html

「患者の役割を強化し、患者が自分の医療にもっと参加することで治療効果が上がり、医療費の削減も達成できる」。スウェーデンのヨハンソン副社会相は力説する。リウマチ患者が自らの痛みの程度を測定し自分で薬を調整できるようにした結果、医療機関の受診率が3割減ったという。
公立病院が整備され患者の自己負担も少なかったスウェーデンは、社会保障費の肥大化、受診までの待機時間の長さなどが問題とされてきた。現在は税負担を軽減化し社会保障費の削減を進めている。
変質する北欧の福祉 民間の参入を促し、医療機関から治療効果などを集めて比較し、結果を毎年公表し質の向上を競わせている。受動的なpatient(患者)からactor(行為者)へという「患者革命」もそうした政策の一環である。
ユーロ危機に見舞われ変化を迫られているのはデンマークも同じだ。患者が在宅のままIT機器を使って医師から遠隔治療を受け、生活の介護もヘルパーを使うのではなく自分でできるようにする。「家庭プログラム」「ペイシェント・エンパワメント(患者の能力向上)」と呼ばれる政策を促進している。「公的な家事援助サービスはむしろ本人の自立度を損なっている」とクラウ保健予防相は語る。
では、日本はどうなのか。北欧諸国の医療や福祉からはるかに遅れ、常に先進的な政策をまねたり憧れたりするばかりだったようにも思われてきた。しかし、スウェーデンやデンマークが模索している医療・福祉は日本でも見られる。財政破綻で知られる北海道夕張市では村上智彦医師が患者から生活習慣を詳しく聞き、患者が主体的に疾病と向き合う健康指導を徹底した。口腔(こうくう)ケアや在宅看護・介護と連携した「地域包括ケア」を進め、少ない医療費で住民の健康度の改善に成功している。
医療費の出費が多い自治体に共通しているのは、住民の生活習慣が悪い、検診の受診率が低い、医療に対する依存心が強い、夜間や休日の受診が多いことだという。夕張市に赴任する以前、村上医師は日本で最も医療費が高かった北海道瀬棚町(当時)で診療所を開設した。薬の処方や注射を求める患者からは健康指導ばかりされることに反発は強かったが、自ら生活習慣の改善に取り組むようになって健康の回復を実感すると熱心に支持してもらえるようになったという。高齢者1人当たり年間140万円かかった医療費も70万円台にまで減ったというのだ。
医療ばかりに依存せず、患者の自立を地域の保健・福祉・介護の切れ目のないサービスで支える取り組みは各地で見られる。滋賀県東近江圏域では近江商人にちなんで「三方よし研究会」と名付けられた会が毎月開かれ、「患者良し・機関良し・地域良し」を目指して医療や福祉関係者が顔の見えるネットワークを作っている。宮崎市の「かあさんの家」では認知症や末期がんの患者を病院から民家を改装したホームホスピスに引き取り、家庭的な雰囲気の中でみとりまで行っている。認知症で独居の高齢者を支える地域医療・介護の実践も増えてきた。
世界の模範になる こうした現場に共通するのは、患者を医療の対象と見る前に、尊厳を守られるべき人として見る思想だ。疾病や障害で失われた機能を嘆くのではなく、残った機能を生かして自立を支援する活動理念だ。福祉の受給者として擁護するばかりでなく、働いて納税者になり、何らかの形で共生社会の一員になることを促す強い信念である。
患者に自立や自助を求める理由は財源不足にもあることを認めよう
企業の業績が上がり、被雇用者の賃金増が国家にとっては税収増につながる。医療や介護が必要な人へのサービスは税財源から捻出され、公的保険の財源も企業や個人の収入から支払われている。こうした社会保障の再分配システムを維持するためにも政府には企業支援策が要請されてきた。その半面、社会保障は財政悪化の元凶のように見られてきたことも否定できないだろう。
ところが、経済のグローバル化や非正規雇用の増加で、一企業の業績向上が直接は国家の税収増や賃金増へと結び付きにくくなった。若者や中高年層へも生活困窮者は広がり、年金や福祉サービスを受けられる高齢者や障害者よりも苦しい立場に置かれている人も少なくない。むしろ、障害者や高齢者が町おこしや、生活困窮者支援の事業を担うという逆転現象すら珍しくなくなったことに注目すべきだ。
先進国が直面している社会保障の状況はよく似ており、目指すべき方向性も共通している。1000兆円もの借金を国全体で抱えながら、医療費の膨張に歯止めが掛けられないなど日本の社会保障政策は深刻ではある。しかし、現場には世界の模範になるような実践がいくつもある。スウェーデンやデンマークの消費税は25%。日本は5%でここまでやってきたのだ。誇りと希望を忘れずに安心と活力に満ちた地域社会を築いていきたい。

***********************(引用おわり)*******************

当院の在宅医療について

   ここ19年間の実績をまとめました。      死亡診断書枚数   在宅患者さん人数   訪問診療・往診のべ回数 2005年    12           66          492 2006年    17           70          553 2007年...