2017年12月31日日曜日

当院の在宅医療について

当院では在宅診療を積極的に行っております。
ここ13年間の実績をまとめました。


     死亡診断書枚数   在宅患者さん人数   訪問診療・往診のべ回数
2005年    12           66          492
2006年    17           70          553
2007年    12           69          546
2008年    22           89          736
2009年    22           98           1136
2010年    25            112           1293
2011年    23            121           1320
2012年    29            131           1571
2013年    27            141           1585
2014年              33                                      144                                   1464
2015年      36            151            1359
2016年      36            141          1682
2017年      30                                      133                                    1481

 永源寺地域全体では病院も含め、年間60人程度の方が息を引き取られています。当院は入院施設はありませんので、私が死亡診断書を書いているのは、主に在宅の方です。つまり、地域の半数以上の方が病院以外で息をひきとられている。永源寺はそんな地域になっています。
 永源寺診療所には、とびぬけて素晴らしい医療機器や、大勢の医療介護スタッフがいるわけではありません。どちらかというと、山間農村地域にありがちな限られた医療機器しかなく、人材も不足しています。しかし、私達が重要視していることは、診療以外のこと、つまり「対話」です。
 外来の時から本人には「ご飯が食べられなくなったら、どうしたい?」と自分の人生の最終章の希望をお伺いしています。また、病院がいいか、在宅にするのかの判断は、私達が在宅医療を勧めることはほとんどなく、本人と家族の対話に参加させていただいている程度です。そして、在宅療養を選択されても、ご家族には「できるだけ仕事を休まないでください」「介護は我々のチームで行います」というようなお話もしています。
 つまり、こちらが「なにがなんでも在宅で」と勧めることはありませんが、ここ10年以上の在宅患者さんの数の推移をみていると、本人・家族が「最期まで家で」と選択される方が多くなっているようです。
 最期まで家にいることが、当然のことのように思っておられる人が増えているように思います。
 もちろん、このように充実した在宅医療が提供できるのも、私個人の力というよりも、地域の専門職と、地域の皆さんのおかげだと思っています。

 高齢化のすすむ永源寺地域ですが、地域の皆さんが安心して生活できるよう、そして対話を通じて「看取りの文化」がさらに定着するよう、これからもお手伝いができればと思います。

今年一年ありがとうございました。
皆様、佳いお年をお迎え下さい。

2017年12月28日木曜日

看護師さん、事務職員さん募集

永源寺診療所では、診療所スタッフを募集しております。

募集職種
・看護師さん
・医療事務職員さん

私たちと一緒に永源寺地域で働きませんか。


連絡先:電話 0748-27-1160
    mail : hanato-circ★umin.ac.jp (★を@に変えてください)

    担当:花戸





(注)東近江市永源寺診療所は、「永源寺地域包括ケア推進会(代表:花戸貴司)」が東近江市の指定管理を受けておりますので、東近江市職員(公務員)としてではなく、同会での採用となります。


2017年12月26日火曜日

永源寺リトルスターズ卒団メンバー訪問

年の瀬も迫り、外来診療はたくさんの患者さんでごった返していました。

午後の診療をようやく終えて、診察室で仕事の整理をしていると、「こんばんは!」と元気な子どもの声が聞こえてきました。
先日、私がチームドクターをしている「永源寺リトルスターズ」を退団した6年生のメンバーが、卒団記念品を届けてくれました。


ボールと写真は診察室に飾らせていただきました。


卒団した皆さん、これからも頑張ってください。
応援しています!


2017年12月15日金曜日

生協総研賞 特別賞を受賞しました。

拙著「ご飯が食べられなくなったらどうしますか〜永源寺の地域まるごとケア〜」が、生協総研賞 特別賞 を受賞しました。
所用により、授賞式には参加できませんでしたが、コメントを出版社の方に届けていただきました。

受賞のよろこびと同時に、関係各位に感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。



受賞スピーチ

 このたびは、第11回生協総研賞特別賞に選出いただき、誠にありがとうございます。せっかくの授賞式ですが、私用により参加できないこと、心よりお詫び申し上げます。
 今回、このような名誉ある賞を受賞することができたのも、私の文章の評価というよりも、國森さんの写真はもちろん、出版社である農村文化協会さま、そして書籍に登場していただいた永源寺地域の皆様のおかげと感謝しております。
 思い返すと、私が永源寺診療所に赴任したのが、今から17年前。当時、大きな病院から赴任した若かりし私は、自らの力で目の前の患者さんの病気を診断し、全てを治療するのだ、と鼻息荒くやってまいりました。しかし、日々、診療所の外来で診療している中で「病(やまい)」は診断できたとしても、治らない病気もある。ましてや老いや死の前では、医学の力はいかに無力であるか、まざまざと見せつけられる毎日でした。
ところが、診療所の外来に来られる患者さんたちは、病や老を抱えながらも、私の話を聴いてもらえるだけで、満足して帰っていかれる。そんなお年寄りたちの後ろ姿を見ながら最初は戸惑いました。「この人たちは、何のために診療所に来ているのか? 治療するために来ているのではないのか?」と。やはり、「病気」しかみていなかったのです。
しかし、病気を診るだけではなく、「その人の生活をみよう」「人生を最期までみとどけよう」、そして地域の人たちの思いを叶えるために「自分自身が変わろう」、そう思うようになると、患者さんの話をたくさん聴くようになりました。
最近では、患者さんと病気の話以外にも、生活のこと、仕事のこと、家族のこと、そして、これからの人生のことなどを話すようになりました。とくに、これからの人生のこととは、ご飯が食べられなくなった時のこと、自分の人生の最終章をどのように迎えたいか、そんなことを話すことができるようになりました。
外来に受診したおばあちゃんに、「ご飯が食べられへんようになったら、どうする?」と私が尋ねると、おばあちゃんは笑いながら、「やっぱ最期まで、先生に診てもらいたいわ」と返される。私は、「お迎えが来そうになったら教えてあげるから、それまでは畑をがんばりや」・・・と、そして「もし、ご飯が食べられなくなったら、私が往診して、最期まで診るよ」そう約束することができるようになりました。今流行りのエンディングノートを書けなくても、ご自身の人生の最終章をどのように迎えたいか、皆さん、真剣に、そして思慮深く語ってくれます。
死を語り合うことは決してタブーではない。本人の希望を叶えるため、いざというときに家族が迷うことがないように必要な対話である、そう確信を持ちました。
永源寺に来て、いろんなことを地域の皆さんに教えてもらいました。地域のつながりや互いをおもいやる気持ち、そして何より私自身が地域の人たちに支えられていると、感じます。
自分が、この地域でできることは何かと考えた時、地域で医療を行なうということだけではない、医療を通じた「まちづくり」「地域づくり」ではないかと思います。せっかくその地域に住むなら、自分にできることをその地域に還元したい、地域の人たちの笑顔をもっと見てみたい、そう思います。
結果として、障がいを持った人も認知症の高齢者も子どもも、皆が互いにおもいやり、支えあい安心して生活できる地域になればと思います。
大病院ではできないことも、地域ならできることがある、そう信じています。
この本が、日本の地域共生社会の一つのモデルを示すことができれば幸いです。
このたびは、本当にありがとうございました。


平成29121
東近江市永源寺診療所

花戸 貴司

当院の在宅医療について

   ここ19年間の実績をまとめました。      死亡診断書枚数   在宅患者さん人数   訪問診療・往診のべ回数 2005年    12           66          492 2006年    17           70          553 2007年...