希死念慮というのは「死にたいと願う気持ち」のことで、うつ病などのメンタルヘルスで注意しなくてはならない症状の一つです。
先日、99歳のおばあちゃん(Aさん)のところに往診に伺いました。
Aさんは、最近心臓の病気などで入院されていましたが先月退院されました。
退院前は畑に行ったりするほど元気だったのですが、退院されてからは外に出られることは少なくなりました。
私 :「家では何してますか?」
Aさん :「洗濯物をたたんだり、着替えたりは自分でしています。」
私 :「ご飯はおいしいですか?」
Aさん :「お嫁さんが美味しいものつくってくれます。」
私 :「困っていることはありませんか?」
Aさん :「前のように畑に行ったりできんようにようになりました。はよう参らしてほしいわ(はやく死にたい)」
この会話を聞いていた実習中の学生さんは、慌てた表情で「まだまだ大丈夫ですよ、死ぬなんていわないでください」と。
このおばあさん、本当に死にたいと思っているのでしょうか?
Aさんは、「早く死にたい」とおっしゃっていましたが、本当に死にたい訳ではないはずです。自分でも残された寿命がわずかであることは十分理解されているはずです。
しかし、その上で「早く死にたい」とおっしゃるのは、「死ぬ間際まで人(この場合は家族)にまで迷惑をかけたくない、できることなら最期まで元気な人生を送りたい。 」というのが本音ではないでしょうか。
私 :「大丈夫、お迎えがくるようになったら(死期が迫ったら)教えてあげるから、それまでは、頑張って働いてください。何かあったら連絡ください。」
Aさん :笑顔で「先生、ありがとう」
在宅では、病気を管理するよりも元気を引き出すことに重点をおいて診療しています。
Aさんとご家族の願いはただ一つ、最期まで家に居たい(居させてあげたい)ということだけです。
「早く死にたい」=希死念慮 ではなく、最期まで自分らしく人生を全うしたい。ただこれにつきるとおもいます。
それに対して保証を与えること=「いつでも連絡ください」と、伝えること。
これが、私の仕事と思っています。
2012年7月4日水曜日
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