2013年5月27日月曜日

死んだふり?

春になり、新規の往診患者さんが増えてきました。

症 例:90歳 女性   普段は裁縫や折り紙を折ったり、とてもお元気な方です。
家 族:ひ孫(0歳、3歳)まで同居する4世代家族

先日まで私の外来に通われていましたが、一週間前より腰が痛くなって寝ていることが多くなったようです。本日、家族の方から往診依頼がありました。
外来では、「入院したくない、最期まで家で過ごしたい」と私と約束していたこともあり、家族の方も慌てることなく往診依頼をされました。

往診に伺い、お部屋に入ったとたんに「先生、ありがとう、ありがとう」と私の手を握って嬉しそうな笑顔。お話を伺って、診察と痛み止めの注射をして、「また来ますね」、と伝えたらまた「ありがとう、ありがとう」と今度は今生の別れのように涙。

「いやいや、おばあさん、お迎えはまだ来んよ」と言葉をかけましたが、聞こえたのか聞こえていないのか、涙を流しながら手を振っておられました。まさにドラマか映画のワンシーンのようです。
きっとこの時点で、おばあさんの心の中は「家で看取ってもらう」モードになっていたのかも。

その日の外来診察も終わり、家に帰ってゆっくりしていたら、午後9時すぎにお家の方から「おばあさんが返事をしない」と電話があり、再び往診に出かけてきました。
おばあさんは、目を閉じてベッドの上でまっすぐ天井を向いて寝ておられます。
私が「おばあさん」と呼びかけても返事がありません。
診察をしても血圧、体温、呼吸、すべて異常はありません。
しかし、どことなくうっすら目を開けておられる様子。


予感がしたので、ちょっと意地悪な質問をしてみました。
「おばあさん、入院しますか?」・・・・・すると、首を横にふられます。
「じゃあ、家にいますか?」・・・・・・・今度は首を縦にふられました。
でも、「おばあさん、わかる?」と声をかけても返事はありませんでした。

最後まで「死んだふり」をされていましたが、3歳のひ孫が「おおばあちゃ~ん」とベッドに飛び乗ってきた時にはうっすら笑みもこぼされました。

どうやら、昼間に「お迎えはまだ来んよ」と言った私の言葉が聞こえていなかったのか。
とりあえず、お元気そうですので、次回伺ったときにはちゃんと伝えようと思います。

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当院の在宅医療について

   ここ19年間の実績をまとめました。      死亡診断書枚数   在宅患者さん人数   訪問診療・往診のべ回数 2005年    12           66          492 2006年    17           70          553 2007年...