この季節になると、往診に伺ったときの私の挨拶はついつい「遅くなってごめんなさい」になってしまう。暗くなってから家にお邪魔するのが申し訳ないのだが、お家の方は「先生、大丈夫でよ」と暖かく迎えてくれる。往診が終わったあとも、いつものように「また、なにかあったら連絡ください」と伝えると「夜分に先生にきてもらって申し訳ないですね。」と、今度も気遣っていただく・・・
永源寺で仕事をさせていただいて、この地域には、コンビニ受診と言われるような消費者意識で「医療を利用する」方はあまりおられないように感じることが多い。
この地域に住んでいる人々は、ご近所さん、酒屋のおじさん、お坊さん、市役所の方、介護スタッフ等いろんな人がいるが、お互いがお互いの立場を尊重し、支え合って生活している。
そのなかで、たまたま私が医師であっただけ、そのような感覚で仕事をさせていただいているのがとても嬉しい。
昨日も会議のあと往診が終わったのが午後5時すぎ、既に日は傾いていた。往診の帰りに見た田は稲も刈り取られ次の季節を迎える準備に入っているようだが、地域の人々の暮らしは、なんらかわりなく営まれている。
歳をとっても、一人暮らしであっても、認知症になっても、障がいがあっても、変わりなく安心して暮らすことができる地域でありたい。
高齢化の進んだ地域で、経済的な発展を目指すことは困難だろうが、別の価値観で評価されてもいいのではないか。しかし、皆が年老いても変わりなく過ごすために、何もしなくていいというわけではない。
地域のために自分たちができることは、きっとあるはず。
お金よりも大切なものが、きっとあるはず。
そんなことを、この地域の一人として、次の世代に伝えられればと思う。
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